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笹幸恵
2025.2.21 02:02皇統問題

『SPA!』倉山記事ー皇位継承問題への驚くべき戯れ言。

『SPA!』2/25号の倉山記事。
皇位継承問題について、驚くべき戯れ言を垂れ流している。

前半は国連の女性差別撤廃委員会を「野蛮人集団」と批判。
人権と特権の区別がついていない、
だから男女平等・ジェンダー平等を皇位継承問題に
持ち込むのだと書く。
皇室は「人権」ではなく「特権」なのだから
男女平等を持ち込むべきではないと言いたいのだろうが、
後段で「天皇になるのは特権ですらなく資格だ」と、
自分が披露した前提を自分で否定しているからずっこける。
倉山にいわせれば、「人権」の反対語が「特権」なんだって。
これ反対語っていうのか?(笑)
そして委員会の勧告に対し、日本が拠出金で脅しをかけた
品位なきふるまいを「毅然とした態度」だと評価。
倉山には品位とか品格とかを重んじる感性が欠如しているのだろう。
一方で、「国連を脱退しろ」などと言うのは「大言壮語で
大人げない」とも批評している。

で、ここからがずっこけのオンパレードだ。
心の準備はいいですか??

(「女性天皇・女系天皇を認めないのは差別だ」と、
皇室に男女平等を持ち込む”連中”が)絶対に答えない質問がある。
「過去に女性天皇は存在した。しかし、男の皇后は存在しない。
男の皇后が存在しないのは、男女差別ではないのか。
なぜ女性天皇だけ求めて、男の皇后を実現せよとは
求めないのか」だ。

・・・・・・、
・・・・・・うん。
どっからつっこんでいいかわからないよね。
編集者が指摘しないのでちゃんと言ってあげるけど、
これは「答えない」のではなく、
問いがおかしすぎるから「答えようがない」のだ。

男の保母さんがなぜいないのだ!
男の看護婦さんがなぜいないのだ!
男のウエイトレスがなぜいないのだ!

と言っているようなものだから。
まず日本語を学ぼう。

さらに倉山は畳みかけるようにこう綴る。
あまりに愚かしいので、略さずに掲載する。

なぜ女帝が存在して、男の皇后が存在しないのか。
それどころか、一般人の女性は結婚により皇族になれるが、
ただのパンピーの男は日本の歴史で誰一人として
皇族になった人物はいない。これは、先例がないからだ。
皇室は先例が掟となり伝統となっている世界だからだ。
この掟により、女系天皇は認められない。

もう椅子から転げ落ちて脱力するレベルだ。
天皇も皇族もごっちゃになっているが、
要するに女性天皇の配偶者はいないではないか、
一般女性は天皇と結婚して皇后になれるのに!!!
と言っている。
先例が掟になっているなどと”大言壮語”しているが、とんでもない。
先例がないからではなく、「典範でそう規定されているから」だ。

皇族と結婚した女性が皇族の身分となるのは明治典範以降。
近代の話で、先例が掟になっていたならあり得ない事態だ。
そもそも何をもって先例とするかなど、捉え方によって
さまざまに変わる。
したがって先例原理主義など、もうそれだけで論理破綻、
これを掟などと断言してしまう思考回路そのものがおかしい。
男性天皇の配偶者が皇后になるのなら、
女性天皇の配偶者は皇婿になればいいだけの話。

が、倉山はこう書く。

歴史も知らない人間が、「その場合はヨーロッパのように
皇婿になればいい」と軽く言ってくれるが、
日本に皇婿などという制度は存在しない。
要するに、皇位継承に男女平等を中途半端に持ち込む連中は、
日本の歴史を破壊したいだけだ。

だーかーらー、
皇婿という制度が存在しないなら、作ればいいではないか。
明治典範が先例なくとも、男性皇族の配偶者を皇族としたように、
現在の皇室典範で、女性皇族の配偶者を皇族にすればいい。
明治にやれたことが、令和の今、なぜできない?


男女平等を持ち込むと日本の歴史の破壊になるというのも、
何の根拠もない。ただの思い込み。
論理飛躍の上に、さらなる飛躍をかぶせてくるからたまらない。
だいたい男系原理主義を主張するために、倉山は
毎回「男女平等」を持ち出してくるが、これとて本質からズレている。

安定的な皇位継承を考えたとき、より「安定的」になるのは
性別にこだわらないこと。それは大陸文化が入ってくる前の
日本古来のあり方にも叶っている。
ならば、男でも女でもいいではないか。
しかも、現代の男女平等の価値観にも沿う。

こういう順番なの、わかる?
本質は「皇位の安定的継承」なの。
だから性別にこだわるのはやめようっていう話なの。
それを、あえてか無意識かは知らないが、
末端だけを切り取って「男女平等を皇室に持ち込むなんぞ許せん」、
「先例が」「掟が」と騒いでいるのが
あなたなの。
本末転倒なの、わかる???

言ってもわかるまい。
ほとんど言いがかりだけで何かを論じた気になっているのが倉山だから。
その男系カルトっぷりが、先例カルトに支えられている岩盤構造だから。

もはや処置なし。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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